美しい日本の私…、田母神前空幕長解任劇

自衛官は、入隊時に以下のような文章の記された宣誓文を朗読、署名捺印をする事が義務付けられている。 いかなる理由でもこれを拒否した場合は、入隊(防衛大学生・防衛医科大学生にあっては入校)することができない。 “私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。” 過去には、公務員の拝命宣誓には当然に存在する(日本国憲法第99条に基づく義務)“日本国憲法及び法令を遵守し”の語句が存在せず、「自衛隊憲法に従わなくてよいのか」と問題になった。
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自衛官 - Wikipedia

全ての自衛官憲法を遵守するって宣誓したわけだから、そりゃ、言葉に嘘がなければ、遵守すんだろう。でも、彼らの内面は問えない。心の中では憲法が間違ってると思っていても、外形において憲法を遵守してれば、それはそれでまったく問題ない。しかしさぁ、そんな状態で部下に対して、彼らの命を失わせかねない命令を出せるのかねー、ってのが自衛官のジレンマだと思う。信じてもいない憲法に従えるのかな…ってのが問題なわけだ。もし、本当にそのように行動できるのなら、どのような発言をしようとも、それはべつに規則に違反しているわけではない。(公的な立場で「憲法を遵守しない」と発言するのは違憲であると私は思うが)

では、今回の空幕長解任劇とは一体何なのか?

 議院内閣制では、民主政における代表あるいは代理関係が一貫しており、一つの連鎖を持っていることが、決定的に重要なのである。つまり有権者が国会議員(衆議院議員)を選挙して選任することにより、国会議員は有権者の代表として、その権限を得る。次に国会議員(衆議院議員)が内閣の組織者として首相(内閣総理大臣)を選任することで、首相は内閣を組織し、それを運営する責任者としての権限を得る。さらに、首相が、行政権を行使するために、複数の大臣(国務大臣)を選任し、内閣の構成員とする。そこではじめて各大臣は、内閣の一員として活動する権限を得るが、その権限は首相に由来するものである。各大臣は、分担して行政事務を行うが、その際に各省庁の官僚による補佐を受ける。形式的には各大臣が任命権者として官僚を任命するが、資格任用制度の導入などで、大臣が自由に官僚を選ぶことができない場合も、官僚の行動はあくまで大臣の補助者としての権限に由来する。
 このように考えると、有権者から国会議員・首相・大臣・官僚と権限委任の連鎖が生じるところに、議員内閣制が一元代表制となり、また民主制の一形態であることが理解できる。この連鎖によって、たとえば官僚の行動を有権者が最終的にコントロールできる可能性が生まれるのである。*1

官僚は本来、各国務大臣が任命するものなのであって、各大臣がその権限を委譲するに足ると認めることが出来なければ、解任できるのである。そのことが日本国が民主制であることの可能性を担保しているのである。と、上の文章は教えている。

[憲法尊重擁護の義務] 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。 [英文] The Emperor or the Regent as well as Ministers of State, members of the Diet, judges, and all other public officials have the obligation to respect and uphold this Constitution.
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日本国憲法第99条 - Wikipedia

このことは、自衛官ばかりの問題ではなくて、すべての公務員の問題なんだけどな(、石原くん)。
しかし、そのまえに、日本は本当に法治国家なのかな?との疑問の方が先にたつのが今回の事件の顛末についての私の感想である。

田母神氏は論文について「私は間違っていないと思っている」としたうえで「国民に不安を与えたことはない」と述べた。憲法九条に関しては「国を守ることについて、これほど意見が割れるものは直した方がいい」と改正を主張。「自衛官の言論を政府見解に沿って統制するのはおかしい」とも述べた。
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東京新聞:田母神前空幕長 懸賞論文、紹介認める 参院委招致:政治(TOKYO Web)

余談ではあるが、田母神さんという姓は、田と母と神と、が揃っていて、きわめて日本的な良い姓だなぁーと私は思った。

cf.

*1:

日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)

日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)